静岡・清見そばを語るブログ:駅南に残るラーメンの記憶と街の空気をたどる話

清見そば本店のラーメン 食うカニ?

清見そばが気になってるけど、グルメサイトの情報ではイマイチ頭に入ってこない。そば屋なのに、なんで多くの客がラーメンを注文するのか。

静岡の中では決してメインじゃない駅南銀座で、なぜ長く営業を続けているのか。

今回は実際に店で食べてみた印象に加えて、静岡の祖父や母から聞いた昔話なども交えながら、清見そばのことをたどってみます。

ラーメンの味だけではなく、この店が昔の静岡駅南でどういう空気の中にあったのかまで見えてくるはずです。

 

清見そばで食べる素朴なラーメン

清見そばで食べる素朴なラーメン
清見そばで食べる素朴なラーメン
清見そばで食べる素朴なラーメン

「清見そば」は、一見コワモテな街のお蕎麦屋さんなので…、初めてだとちょっと勇気がいるかもしれません。

私もオロオロしながら店先で写真を撮ってましたが、常連っぽいオッチャンが爪楊枝をくわえながら出てきて、「兄ちゃん、ここ美味いよ!」と言いながら去っていくなど…。

まあでも、逆にこれで覚悟が決まった感じです。恐る恐る入ってみると…、外観の印象よりずっとフレンドリー。テーブル席だけでなくカウンター席もあって、一人でも気軽に利用できます。

清見そばで食べる素朴なラーメン
清見そばで食べる素朴なラーメン
メニューと価格は訪問時のものです
清見そばで食べる素朴なラーメン

なので、老舗の蕎麦屋というより、ちゃんと座って食べられる「駅ナカの蕎麦屋さん」といった感じ。メニュー表を見てもやはり面白く、そもそも全体的にかなり安い。

そのうえ、蕎麦屋なのに「かけそば」よりも「ラーメン」がメイン位置。

でも、さすがに蕎麦屋でラーメンだけを注文するのも気が引けますが…、周囲の客が次々と「ラーメン!」「こっちもラーメン!」みたいな感じなので、そんな心配はまったく無用です。

清見そばで食べる素朴なラーメン
清見そばで食べる素朴なラーメン
メニューと価格は訪問時のものです
清見そばで食べる素朴なラーメン

そしてなにより驚くのが提供スピード。ドリフのコントか?ってくらい、瞬時にラーメンが出てきます。

丼はかなり素朴で、出汁の効いた醤油スープにストレート麺。麺がとにかく長く、真面目にすすったら、5すすりで丼が空になってしまうほど。

でも、食べ終わるときちんと満足感が残る。そんなラーメンです。

祖父と母から聞いた昔の駅南銀座

祖父と母から聞いた昔の駅南銀座
今昔マップ on the webより https://ktgis.net/kjmapw/

さて、「清見そば」の話をすると、どうしても昔の駅南銀座の話になってしまいます。かつての静岡は今よりずっと駅北側が栄えていて、駿府城の周辺に街が広がっていたようです。

一方、東海道本線の南側は「のどかな場所」で、田畑が広がり、人の気配も今ほどは濃くないエリアでした。

今でこそ新幹線ホームが駅の南側にあり、こちら側にはビジネスホテルなども多いので、そのまま南側を歩いてしまいがちですが…、昔の静岡では、街のメインはあくまで北側。

私の祖父も、その北側で職人として修行していました。でも結婚を機に店を持つことになり、修行先の旦那さんから場所を手配してもらって、出店したのが駅南銀座だったと聞いています。

祖父と母から聞いた昔の駅南銀座
国土地理院航空写真をもとに加工して掲載

今でこそ駅から近い場所ですが、当時の地図を見てみると、よくぞこんな何もない場所に店を出したもんだなと…。でも祖父の店の、すぐ目の前には「清見そば」がありました。

祖父の店よりずっと前から営業していて、同じ商店街の先輩ということで、いろいろと面倒を見てくれたそうです。

だから祖父にとって、「ラーメンと言えば清見そば」。私が母方の実家である静岡へ行くと、祖父は自然とここから出前を取ってくれました。

私が人生で初めて食べた、母以外の人が作ったラーメン、それが「清見そばのラーメン」。なので、自分にとっては「ラーメンの基準」になっている味なんです。

この店と駅南に暮らす人たちの話

この店と駅南に暮らす人たちの話

そんな母から駅南銀座の話も、清見そばとつながります。1960年代の航空写真を見ると、静岡駅の南側には鉄道関係の設備がずらっと並び、いかにも鉄道の街といった雰囲気です。

新幹線もまだなく、東海道本線は地上を走り、蒸気機関車のための施設まで見えています。母は駅南銀座で育ったので、子どもの頃は線路の跨線橋に登って、蒸気機関車が来るのを待っていたそうです。

今ならとんでもない話ですが…、煙突に小石を落とそうとして、運転手さんに煙を吹き上げられて怒られた、なんて話も聞きました。

この店と駅南に暮らす人たちの話
この店と駅南に暮らす人たちの話

今でもJR東海静岡支社が駅南にあるように、この辺りは昔から鉄道と共にあった場所なんでしょう。そうなると当然、そこで働く人たちも集まります。

忙しく働く男たちが多く、祖父の店にもそういったお客さんがよく来たと聞きました。

また、近くには交番もあったようで、給料日前でお財布が苦しい若いお巡りさんに、祖父が夕飯を振る舞ったこともあったとか。

この店と駅南に暮らす人たちの話

今なら出来すぎた昔話みたいですが、そんな「人の近さ」が駅南銀座にはあったんだと思います。鉄道関係者、職人、警察官。そういう人たちが同じ商店街で働き、食べ、暮らしていた。

清見そばのラーメンが今でも安く、そして妙に早く出てくるのも、そういう人たちの腹をサッと満たすためだったのかもしれません。金欠のお巡りさんでも、食べられるようにね。

お店の情報

清見そば 本店
住所:静岡市駿河区南町1−6
電話:054-285-0649
種類:蕎麦店
予算:1〜1,000円/1人あたり

 

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