終点が近づいてきて、車内に乗換案内のアナウンスが流れ始める。でも窓の外を見ても、まだ駅に着く気配もなく、電車はゆっくり走ってる。
普通の駅ならスッと入るのに、終点だけは妙に「時間稼ぎ」しているように思えてしまう。そんな疑問を持った人、いませんか?
ずっと走ってきただけに…、運転士さんも車掌さんも、「有終の美」を飾りたいのかな?─ たしかに、エンドロールっぽい感じもする。ただ実際は、もっと現実的な事情がありました。
自分が実際に乗っていて感じたあの違和感をもとに、その理由をたどっていきます。
終点前の電車がゆっくり走るのはなぜなのか

終点駅の手前で電車がゆっくり走る理由は、ひとつではありません。駅の構造や運用、鉄道会社ごとのルールによって変わりますし、駅に車止めがあるかなども関係するでしょう。
そのうえで、今回みたいに「駅のかなり前からノロノロ走る」ケースは、駅の手前で行われる「転線」が理由になっている可能性が高いです。
たとえば「下り電車」に乗っていて、まもなく終点駅に着くとします。そのとき、その電車が「下りホーム」に入るのか、「上りホーム」に入るのか ─ ここがヒントです。

普通の駅なら、「下り電車」は「下りホーム」に入ります。でも終点駅の場合、その「下り電車」は折り返して、当駅始発の「上り電車」になるのが一般的。
なので、駅の手前で「下り線」から「上り線」へ車線変更する必要があるんです。これを「転線」といい、ここに速度制限がかかっている。


つまり運転士は、駅ホームの停止位置に合わせて減速するのではなく、この「転線」に合わせて、かなり手前からスピードを落とします。
だから乗っている側からすると、駅の手前からゆっくり走っているように見えるわけです。
終点でも電車がゆっくり入らない駅もある

そう考えると、どの終点駅でもゆっくり走るのかって思いがちですが…、実はそうとも限りません。サッと入る終点駅も、あったりします。
いずれにしても終点というのは、電車にとってはUターンが必要な場所なので、どこかのタイミングで「上り線」と「下り線」を切り替えなければなりません。
ただ、それを駅の手前でやるのか、別の場所でやるのかで、あのノロノロした動きの出方が変わってくる。

たとえば東武線の南栗橋駅。ここは終点ですが、「下り電車」はそのまま「下りホーム」にサッと入ります。駅手前で転線をしないので、あのノロノロ走行は起きません。
なぜそんな運用ができるのかというと、南栗橋駅の先に車両基地があるからです。
いったん「下り電車」はそのまま「下りホーム」に入ったあと、回送で車両基地に引き上げて、そこで向きを変えてから「上りホーム」に戻ってくる。つまり転線の処理を駅の外でやってるイメージです。



ちなみに、ひとつ隣の栗橋駅はJR宇都宮線との乗換駅ですが、ホームの構造的に終点としては扱いづらい。
こういった事情もあって、南栗橋が終点になっていると考えると、終点は「駅の規模」ではなく、「運用のしやすさ」で決まっていることが見えてきます。
終点前のゆっくり走行は演出ではなかった

さて。自分も昔、ちょっと遠くまで電車で出かけたとき、終点の手前で妙にゆっくり走るのを見て、「最後だから雰囲気出してるのかな?」と思ったことがありました。
車掌さんのアナウンスが流れて、映画の締めくくりみたいな空気が出てくる。なんとも言えない旅情感があって、いわゆるエンドロールっぽい感じです。
ナイス演出だぜ、車掌さん。─ 正直、そう思ってました。ただ、あとから考えると…それは完全に勘違い。

鉄道会社としては、電車はスムーズに走らせたい。特に本数の多い路線では、一本でもノロノロ走れば全体に影響が出てしまうので、ゆっくり走ることは歓迎されません。
それでも終点前で減速が起きるのは、転線や設備の条件があるからです。

ちなみに、終点前に電車がずっとゆっくり走ったあと、「ガチャガチャ!ガチャン!」という音を聞いたこと、ありませんか?あれがまさにポイント(分岐器)を通過している瞬間の音。
なんとなく感じていた違和感も、仕組みを知るとちゃんとつながる。ただまあ…演出であってほしかった気持ちも、ちょっとはあるけどね。






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