SNSで偶然目にした「そばの上に浮かぶベーコン」の写真に、思わずスクロールを止めてしまった ─ そんな経験がきっかけで、このメニューの存在を確かめたくなる方が多いようです。
舞台は足立区・梅島の「立喰そば雪国」。黒いつゆと田舎そば、そして4枚のベーコンという独特の組み合わせは、見た目だけでは味の想像が追いつきません。
この記事では、店先に漂う出汁の香りから席につくまでの空気。実際に食べて分かる味の奥行き、食後に残る余韻まで、街歩きの延長で楽しめるようにまとめています。
「あの写真は本物?」という疑問に、ひとつずつ答えていきます。
梅島駅から始まる雪国そばの物語



梅島駅を出た瞬間、ふわっと漂ってくる出汁の香りに足が止まります。香りの先にあるのが「立喰そば雪国」。そのお店は、梅島駅から徒歩30秒ほどの場所にあります。
店先には、その日の返しやつゆの状態を丁寧に書き出した貼り紙がいくつも並び、控えめな外観とは対照的に、そばへのこだわりが静かに伝わってくる感じ。
店内はテーブルが3卓と、立食カウンター5席のコンパクトなつくり。昼どきは少し入りづらいかもですが、ピークタイムを外せば、初めてでも問題なく入店に成功します。
肩肘張らない雰囲気に柔らかい接客が重なって、誰でも気軽に利用できるのが魅力です。さらに、そばは田舎・藪・更科の3種類から選べるという意外な選択肢も。
店の前に立った段階で、すでに小さな「物語」が始まっているように感じられます。
席に着いてから着丼までに起きたこと

入店に成功し、注文を伝え現金で支払いを済ませます。私が席に落ち着くと同時に、厨房では生麺が茹でられ始める。そしてなんと、スーパーでもよく見る「あの4枚パックのベーコン」が…。
ペリペリっと「開封の儀」が執り行われ、茹で上がったそばの上に丁寧に並べられ、熱い出汁が注がれてゆきます。な、なんだろう…。この「子供は見ちゃいけないシーン」を見てしまったワクワク感。
そしてついに、伝説の下町秘境グルメ「ベーコンそば」が運ばれてきました。まず目を奪うのは、なんと言っても「で〜ん!と4枚も乗ったピンクのベーコン」。
今まで見たこともない食べ物に、さすがにちょっと混乱します。
でもそんな私に、そっとお冷を継ぎ足してくれる店員さん。え?立ち食いそばでそこまでしてくれるの?と驚きです。梅島という街の距離感の近さを感じました。
田舎そばとベーコンが暴れ回る構造
田舎そばが「最初に襲ってくる」瞬間



今回、私は「田舎そば」を選びました。まずはベーコンをそっとよけて、田舎そばを持ち上げますが…。箸が折れるかと思うほど重みがあって、「ガボっ」と上がってきます。
太さも色も堂々としていて、黒いつゆとの組み合わせだけでもド迫力。口に入れた途端、一斉に攻め込んでくるような密度で、思わず「うほへっ!うまふっ!」という変な声が漏れそうになるほど。
ただ見た目ほど荒々しいわけではなく、噛むほどに素朴な甘みがふっと出てきて、食べやすさも感じられます。
正直「ド田舎そば」に改名してほしいくらいの無骨さなのに、黒いつゆと合わさることで「最高の郷土料理」になるといった感じ。思わず「ふほっ!はふっ!」としながら食べ進めてしまう魅力がある。
この「ド田舎そば」だけでも十分印象的なのに、ここにベーコンが加わると、また雰囲気が一変します。
ベーコンの存在感と「都会化するそば」の謎


そばの勢いに慣れてきた頃、次に気になるのが4枚並んだベーコンです。「4枚入りパック」を惜しげも無く全部乗せるという気前の良さは、まさに下町らしいサービス精神です。
そばと合わせて食べてみると、田舎そばの無骨さがベーコンの塩味でふっと都会的に変わって、「あれ?ド田舎さん、上京した?」って感じ。
まるで地方から出てきた大学生が、初めてスタバで「なんちゃらフラペチーノ」を飲んだ時のような、あの変化。
そばにベーコン、意外に合う!ただ勢いよくすするとと、ベーコンが喉を覆って「がほっ!」っと吸引力をゼロにされるので、ちょっと注意が必要かも。
またベーコンでそばを巻いて食べるのも、家系ラーメンでいう「ライス海苔で巻いて食う」的な楽しさがあって魅力です。オプションで卵を落としたり、シャウエッセンを加える食べ方も相性が良いかも。
自分から「出汁の香りがしてきた」話

この記事の冒頭に、「梅島駅を出た瞬間、ふわっと漂ってくる出汁の香りに足が止まります」と書きました。確かに、店の前でも出汁のいい香りが漂っているんです。
でも不思議なことに、ベーコンそばを食べている間、私はあまり出汁の香りを感じませんでした。
普通にバランスが良くて美味しくて、味はここまで書いてきた通りなんですが、なぜか出汁の香りはあまり感じなかった。「ド田舎そば」と「ベーコン」に興奮してたから?
店を出た後、私はそんなことを考えながら東武線に乗りました。ところが、先ほどまで店先に漂っていた出汁の香りが衣服に残っていて、「あれ??これ自分?」と戸惑います。
その日は梅島駅から春日部駅まで移動したのですが、東武線の電車に揺れながら、ずっと「立喰そば雪国」の出汁の香りを漂わせていました。周囲にはちょっと、迷惑だったかな…。








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