短編スマホ小説:足立区でタヌキを見た日、私はひとつの恋と誤解に気づいた。

短編スマホ小説:足立区でタヌキを見た日、私はひとつの恋と誤解に気づいた。 読むカニ?

私の名前は熊田久真子。
小さな会社で働いている。

鮭とパスタと、
ちょっとお酒が大好きな、
普通の女子だ。

昨日、
家の近くを歩いていたとき。

路地を“モサッ”と動く影があった。
猫…?にしては…でかい。

そいつはノソノソと歩いて、
こちらをチラッと見て…、

顔の模様が、タヌキにそっくり。
私は反射的に、スマホを構えた。

東京でタヌキなんてありえない!

でもそこにいる。
確かにいる!

翌日、会社に行くと、
私は朝イチでみんなに写真を見せた。

「え、すごっ!」
「足立区にいるんだ!」
「めっちゃかわいいじゃん!」

その反応がうれしくて、
私はちょっと照れ笑いした。

─ その瞬間。

「おい、ショートカット」
「今日は何を大騒ぎしてんだ」

最悪のタイミングで、
あのウザ男が現れた。

社外コンサルの神沼龍司。
ウザいだけが、取り柄の男。

私は嫌な予感を抱えつつ、
スマホを差し出した。

昨日、
近所でタヌキを見たんです。

しかし神沼は、
スマホを見るなりこう言った。
「あ?これ猫だろ」

空気が止まる。

え?いやいや!
どう見てもタヌキじゃないですか!
この顔の柄とか!

「お前さぁ」
「東京にタヌキなんて」
「存在しない前提で考えろよ」

「それにな、しっぽが単色じゃねえか」
「タヌキなら“しましま”だ」

「世界の任天堂だって」
「タヌキマリオはしましまで」
「描いてるだろ」

うっっっざ。

でも…、
言い返せない自分が悔しい。

神沼は勝ち誇った顔で
「野良猫の写真程度で」
「朝から騒ぐなってことだ」

そう言い残して、去っていった。

ぐぐぐ…💢。

私はデスクに座り、
ひとりスマホを見つめる。

写真アプリを開くと、
画面にはずらっと、画像が並んでいる。

その中には ─

この前の社員旅行で
上司と撮ったツーショット。

友達と遊んだ日の楽しい写真や、
美味しかったご飯。

実家で飼ってる柴犬のポチや、
弟の変顔に両親の笑顔。

みんな私の大切な記憶たち。

なのに、
その中にぽつんと混ざっている…

あの薄汚れたタヌキ面の…、
野良猫の写真。

うわ…
なんかムカつく。

“東京で貴重なタヌキの写真”なら
まだ良いいけど…。

野良猫のくせに、
なんで私の思い出に紛れ込んでんのよ。

私はその写真を“削除”しようと
野良猫の写真に親指を乗せた。

ちょうどそのとき ─

隣にあった
一枚の写真が目に入る。

社員旅行のときに、
上司と撮ったツーショット。

楽しかったな…あのとき。

調子に乗って飲みすぎるから、
顔が真っ赤になってるじゃん。

…。

「あれ、クマ子。どうしたの?」
背後から上司の声がした。

え、近っ……!
心臓が一気に跳ね上がる。

やばい。
いまツーショット見てた。
変な女だと思われる??

私は慌てて
スマホを胸に引き寄せた。

え、ち、違うんですこれは、その…。

上司は首を傾げ
「ん?それってもしかして…」

「見せてみ?」と手を伸ばしてくる。

私は観念して、
野良猫の写真を見せた。

昨日、家の近くで…
モジャモジャの動物を見て。

タヌキかと思ったんですけど
でも、猫だって言われて…。

上司は写真を見て一言。
「いや、これタヌキだよ?」

私は固まった。

え…?
でも…しっぽがしましまじゃなくて…。

上司は軽く笑って言った。

「タヌキのしっぽは単色だし」
「しましまは“アライグマ”だよ」

……え?

世界が、ゆっくりとひっくり返る。

さっきまで
“削除したい写真”だったのに、

急に“大切な写真”に
見えてくるから不思議だ。

でも……なんで?
気づくと声が漏れていた。

じゃ、じゃあ…

なんでタヌキのキャラって、
しましまで描かれるんですか?

上司は肩をすくめて笑った。
「さぁ…?」
「かわいいから、とか?笑」

そう言って去っていく背中を、
私はしばらく見送ってしまった。

タヌキのしっぽはなぜ「しましま」?:ラスカルとマリオが作った意外なイメージ | 沼探
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