イトーヨーカドーの「ポッポ」と聞けば、家族でフードコートに立ち寄った思い出がよみがえる人もいるかもしれません。あのポテトやソフトクリームの味は、どこか記憶に残り続けている存在です。
そんなポッポですが、最近は店舗の閉店が目立ち「なぜこんなに減っているのか」と感じたことはないでしょうか。
この記事では「50周年復刻カップ」が話題になった山盛りポテトをきっかけに現地を訪れ、懐かしさと現在の姿を重ねながら、閉店の背景と変わらない「ポッポの魅力」を探りました。
ポッポが今なお多くの人に選ばれる理由に、あらためて目を向けてみます。
復刻カップで注目される山盛りポテト
50周年で復活した懐かしのカップ
ポッポは2025年に創業50周年を迎え、その記念企画として懐かしのポテトカップが復刻されました。
かつて使用されていたカラフルなデザインを再現したもので、昭和や平成初期を思い出す人々の間で話題となり、SNSでは「懐かしすぎる」「これはテンションが上がる」といった投稿が続出。
復刻カップは数量と期間が限られており、2025年6月13日から提供が始まりましたが、店舗によっては短期間で終了したようです。
対象メニューは山盛りポテトで、通常は紙袋で提供されるこのサイズを特別にカップ入りで出すという限定仕様だったと考えられます。
記憶の中のポッポと再会できたような気持ちにさせてくれるこの企画は、多くの人にとって過去の味を現在に引き戻す「ちょっとしたご褒美」になっていたのかもしれません。
三郷店で実際に食べた通常カップ

しかし今回訪れたポッポ三郷店では、残念ながら復刻カップの配布がすでに終了しており、山盛りポテトは通常の紙パックでの提供に戻っていました。
どうしても「器付き」で味わいたかったという気持ちもあり、唯一カップで提供されている「メガ盛りサイズ」を注文し、せめて雰囲気だけでも味わいたいと考えました。
目の前に出てきた器は想像以上に大きく、ぐるりとロゴが印刷されたカップの存在感に一瞬だけ当時の記憶が重なります。
自分が子供だった頃にはメガ盛りという概念すらなかったため、この器の大きさに驚かされました。
復刻カップとは違うけれど、ポテトが器に山盛りにされた状態で目の前にあるだけで、なぜか気持ちが落ち着きます。
今回は復刻には間に合わなかったものの、今のポッポでしか体験できない味と時間を、ちゃんと楽しめたと思いました。
ポッポポテトの真面目で純朴な味わい

今回実際に食べたポッポのポテトは、昔の記憶にある味とほとんど変わっていませんでした。表面はサクッと揚がり、中にはじゃがいもの素朴な食感が残っていて、油っぽさを感じさせない仕上がりです。
塩味も控えめで素材の味がしっかりと前に出てくるような、真面目で誠実な印象の味。
マクドナルドのポテトが香りと油で一気に食欲を引っ張るタイプだとすれば、ポッポのそれはあくまで「芋の美味しさ」を中心に据えたやさしい味わいです。
小さい頃に母や妹とフードコートに寄って、ポテトとソフトクリームを交互につまんでいたあの光景を、ふと思い出してしまいました。
変わってしまったものが多い中で、当時のままの味に再び出会えたことが、今回一番うれしかったことかもしれません。
たこ焼きで振り返るポッポの思い出
病院帰りに味わったポテトとソフト

子供の頃、病院へ行くのは正直あまり気が進まない用事でしたが、その帰りに寄るイトーヨーカドーのポッポだけは楽しみでした。
母と妹と3人でフードコートに入り、ポテトとソフトクリームを買ってもらえる時間が「ちょっとしたご褒美」でした。
熱々で塩気のあるポテトと、冷たくて甘いソフトを交互に食べるのが我が家の定番。妹と目を合わせながら「次どっち?」と無言で合図を送り合ったことを覚えています。
決して派手な場所ではありませんでしたが、当時の自分にとっては特別な空間。ポッポのカウンターに並び、ソフトを手渡されるまでドキドキ待っていたあの時間までもが懐かしく思い出されます。
何気ない日常の風景の中に、大切な記憶が詰まっている。そのことを静かに思い出させてくれる味でした。
子供の頃に感じた「たこ焼き」の印象

幼い頃、自宅の近くでたこ焼きを買える場所といえば、イトーヨーカドーのポッポだけでした。
母が出かけた帰りに買ってきてくれることが多かったのですが、私が家で食べる頃にはすっかり冷めてモサモサした食感に。
そのため私は「たこ焼きってこういう食べ物なんだ」と思い込み、あまり好きではありませんでした。
そのため、当時の私はお祭りで屋台が並んでいても自然と「たこ焼き」には目が向かず、代わりにじゃがバターやフランクフルトを選ぶのが定番。
今思えば、焼きたてのたこ焼きを食べる経験がなかっただけで、本来の魅力に気づけていなかったのだと思います。あの頃の自分に「熱々のたこ焼きは別物だよ」と教えてあげたくなります。
銀だこで変わった価値観と今のポッポ

そんな私ですが、学生時代に初めて銀だこを食べたとき、それまでの「たこ焼き観」が大きく覆されました。
外カリ中トロ。香ばしいソースとマヨネーズが絡み合うあの球体は、言うまでもなく「たこ焼き界」の絶対王者(知らんけど)。
それまで自分にとってたこ焼きは、モサモサしていて苦手な食べ物でしたが、銀だこに出会ったことで「また食べたい」と思うようになり、たこ焼きの印象が一変しました。
そして今回、久しぶりにポッポのたこ焼きを注文してみたところ、焼きたてで外カリ中トロの完璧クオリティー。
あの頃の記憶とはまったく違い、丁寧に焼かれたポッポのたこ焼きは、ちゃんとおいしく仕上がっています。自分の記憶を更新する味に出会えたことが、今回の収穫のひとつでした。
ポッポの閉店が続く理由とその背景
ヨーカドーの縮小と直営方式の負担

ポッポの閉店が増えている背景には、イトーヨーカドーの店舗縮小が大きく関係しています。近年は収益の悪化を受け、不採算と判断された店舗を整理する流れが全国で進められています。
ポッポはテナントではなくヨーカドーの直営ブランドであり、運営にかかる人件費や仕入れのリスクをすべて自社で背負う構造にあります。
一方、専門店のテナントは家賃収入をもたらしつつ運営責任も店舗側が担うため、企業側から見ると安定的に映りやすくなります。
セブン&アイ全体としても、現在はコンビニやネット事業など回転率の高い業態へ注力する流れが加速しているところ。
そうした経営判断の中で、昔ながらのフードコート直営型であるポッポは、戦略の優先順位が下がっている状況に置かれていると考えられます。
フードコートで専門店と競合する構造

現代のフードコートでは、たこ焼きなら「銀だこ」、ラーメンなら「餃子の王将」といったように、専門ブランドが多数並ぶことが当たり前になっています。
そうした中で、ポッポのように幅広いメニューを扱う店舗は、商品が被ってしまう分だけ不利な立場に置かれがちです。
実際、たこ焼きやラーメンのような人気メニューがポッポにも並んでいるため、他店と「客の奪い合い」が生まれやすい構図になります。
たとえば銀だことポッポが同じフードコートにある場合、どちらを選ぶかは当然競合になります。
家賃を払うテナント店の売上が下がるような状況が続けば、ヨーカドーとしても直営側の見直しを迫られるのは自然な流れです。
フードコート全体のバランスを考えたとき、ポッポが居場所を失いつつあるのも無理はないと感じます。
懐かしさ需要が生む存在意義の揺らぎ

最近では「ポッポが懐かしい」「また食べたい」といった声がSNS上で多く見られるようになりました。
復刻カップの登場もあって、かつてのポッポを知る世代から注目が集まり、一時的に話題性が高まっていたのは間違いありません。
とはいえ、こうした「懐かしさ需要」がポッポにとって追い風になるとは限りません。
たとえば売上が急に伸びたことで隣接テナントと競合が生まれ、結果的にフードコート全体の売上バランスが崩れるということもあり得ます。
企業側としても、感情的な評価だけでは存続を決められません。利益構造や周囲との関係性を冷静に見極めながら、継続の是非が判断されていくことになります。
愛されてきた店だからこそ、時代とのすり合わせが求められる局面にあるのだと感じました。
まとめ
今回訪れたポッポ三郷店では、復刻カップの配布はすでに終了。店頭にはその旨を知らせる案内も掲示されていましたが、それでも多くの人が並び、カウンター前には列が続いていました。
とくに目を引いたのは、利用客の層が幅広かったこと。小さな子ども連れや若い女性の姿もあり、ポッポの魅力が世代を越えて広がっていることを感じさせました。
注文されていたメニューもポテトだけでなく、ラーメンやソフトクリームなど実に多彩で、それぞれが自由に楽しんでいる様子が伝わってきます。
過去の記憶を確かめに来たつもりでしたが、いまのポッポの空気に触れたことで、自分のなかの評価が大きく更新されたようにも思いました。

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