短編スマホ小説:午後の会計で、私の心だけ支払われてしまった話。

短編スマホ小説:午後の会計で、私の心だけ支払われてしまった話。 読むカニ?

私の名前は熊田久真子。
小さな会社で働いている。

鮭とパスタと、
ちょっとお酒が好きな、
普通の社会人だ。

― のはずなんだけど…。

その日は少しだけ
落ち着かなかった。

それは
外出先での打ち合わせを終えて、
上司と、あのウザコンサルと三人で
ランチを食べたから。

会計のとき。

「じゃあ別々でお願いします」

私が先にスマホを出す。
画面を開いて…

これでお願いします。
ピッ!

店員さんが笑顔でうなずく。

その次。
あのウザコンサル。

「じゃあ、私はこれで」

そう言って出したのは、
やたらと光るゴールドカード。

キラーン⭐︎って音が
聞こえた気がした。

「男は、ステータスだからね」

出た…。

「唐揚げ定食、プライスレス」
ゴールドカードを持って
ポーズをキメている。

(うるせえよ…)
(早く支払えって…)

そして最後。
「すみません、これ使えますか?」

上司が出したのは、
カードでもスマホでもなく。

紙。

店員さんが一瞬見て、
すぐに笑顔になる。

「はい、大丈夫ですよ」

食事券だった。

私はそれを見た瞬間、
頭の中の何かが
全部そっちに持っていかれた。

外に出る。

「支払いは信用だからね」
「ビジネスでも、ランチでも」

ウザコンサルはまだ言ってる。

「カードというのは」
「人格の証明なんだよ」

へえ…笑
……そうなんですね〜。

でも私は、
もうそれどころじゃない。

あの…
上司のほうを見る。

さっきの食事券って、
どこでもらったんですか?

上司は少し驚いた顔をして、
普通に答えた。

「ん?ああ、あれ??」
「この前、人間ドック行ったとき」
「もらったやつだよ笑」

人間ドック??

その言葉だけで、
なんだか急に
大人の世界の話になった気がする。

「使うタイミングなくってさ」
「財布に入れっぱなしだったから」

そう言って、
ちょっと照れたみたいに笑う。

その瞬間。

― あ、やばい…。

胸の奥が、ふわっとした。

ゴールドカードよりも、
ずっと静かで、
ずっとかっこよく見えた。

ウザコンサルが何か話している。
でももう、聞こえてない。

私の頭の中はひとつだけ。

人間ドックって…
食事券もらえるんだ♡

でも私はまだ、
そういう年齢じゃない…

ぐぐぐ…

…いいなあ♡

私も早く
もらえるようになりたいです!

上司は笑ったが
ウザコンサルは首をかしげた。

でも私は ―

なぜかちょっとだけ、
大人に近づいた気がしていた。

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人間ドック後に渡される食事券の本当の理由を、医療とビジネスの二つの視点から解き明かします。
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