JR九州の電車に乗っているとき、「床に座らないでください」という注意書きを見かけたことはありませんか?
この記事は、そんな注意書きに「え?床に座る人なんているの?」ってビックリしてしまった人に向けて書きました。
かつて九州では、「子どもたちが電車の床に座る」という光景が珍しくなかったそうです。でもどうして九州の子どもたちは床に座っていたのか?
この記事では子どもたちの感覚や電車の座席配置、九州特有の乗車スタイルなどをもとに、その理由を考えていきます。読み終えたとき、あの張り紙がちょっとだけ身近に思えるかもしれません。
JR九州の「床に座らないで」という張り紙

JR九州の電車に乗ると、ドアの窓下に「床に座らないでください」という張り紙を見かけることがあります。これは、初めてみた人とって「かなりのカルチャーショック」。
だって電車の床に座る人なんて見たことないし、せいぜい酔っ払っいが座席や床で寝てることはあるけれど、それもごく稀なこと。わざわざ注意書きを貼るほどのことはないでしょう。
実際、私は2025年9月に福岡県・佐賀県・長崎県の各地を電車で回りましたが、床に座っている人は見かけていません。
それでもネット上には、「かつての九州では学生が電車の床に座ることが多かった」といった情報が多くあります。
ではなぜ床に座ったのか? しかもなぜ九州で?
そんな疑問を、「子どもたちの事情」と「九州の鉄道事情」から考えてみます。
なぜ子供は電車の床に座ってしまったのか
学校で当たり前にやらされる「地べた座り」

私は、子どもたちが電車の床に座ってしまう理由のひとつに、学校での「地べた座り」の習慣があると思っています。
体育の授業や朝礼、避難訓練、集会など、「学校で子どもたちが床に座る」場面はけっこう多いはず。
グラウンドでも体育館でも、そっと椅子に座ることより「規律を乱さないこと」とか、「多少服が汚れても大声で応援すること」のほうが重視される環境で生きているのではないでしょうか。
そんな環境で育つと、「床に座ることが悪いこと」という意識を持たないようになるのも無理はありません。
だから電車の中でも「大人たちは服が汚れるのが嫌だから、座席に座っているんだろう」なんて考えても不思議じゃない。
つまり私たちが彼らに違和感を覚えるのは、もう「大人になってしまったから」なのかもしれません。
大人になると自然と消える「床に座る習慣」

一方、大人が電車の床に座ることは殆どありません。理由は単純で、外出先で「座敷以外の床に座る」場面が極端に減るから。
社会人になると学校のように床に座る機会は殆どなくなり、オフィスや病院、カフェなど、どこへ行っても椅子があるのが当たり前。
床に直接座るのは和室とかアウトドアとか、ちょっと特別な場面に限られる。つまり「床に座るのって別に変じゃないよね?」という感覚は、子ども時代特有のものなんだと思います。
もちろん、大人になるにつれて「電車の床には座っちゃダメ」という常識も自然に身につくし、周りの目も気になってくる。
つまり、もし今の電車で床に座っている子がいたとしても…、その子だって「いつかは座席に座る大人」になっていくはずです。
座らず食べるなら鳥栖駅名物「中央軒」

出張や旅行で鳥栖駅に立ち寄る予定があるなら、この話は知っておいて損はありません。中央軒の存在が、鳥栖での1日をちょっと特別にしてくれます。
昭和レトロな「駅の味」を楽しんでみたい方は、ぜひこちらの記事もどうぞ。
なぜそれが「九州の電車」で目立ったのか
ボックスシートが生む「気まずさ」の構造

今回九州を電車で回ってみて、他の地域に比べてボックスシート(向かい合う4人掛け座席)の車両が多いなと感じました。
通勤・通学に使うような普通列車でもこのタイプが一般的で、子どもたちはボックスシートに座って通学をしています。でもこれが九州の「座りづらさ」を生んでいるのかもしれません。
たとえば5人グループで乗ると、必ず1人は座れない。逆に1人で空いているボックスシート座れば、「次の駅で残りの3席を知らない学生グループに固められるリスク」があるわけです。
向かい合わせの視線や距離感、学校の違いや学年の上下を気にして、座席を使わずあえて床に座る ─ 実際に九州の学生に聞いたわけではありませんが、車内の雰囲気からそんな空気を感じました。
「みんなで帰る」文化とJR九州の気づき

もうひとつ、九州ならではの「みんなで帰る」スタイルも関係していそうです。実際、グループでワイワイ話しながら乗ってくる子どもたちの姿が多く見られました。
一方で、もちろん一人で電車に乗っている子どももいて、その子たちにとってはボックスシートは少し座りづらいのかもしれません。
でも近年は、JR九州の車両もロングシートが増えてきているようです。今回私が乗車した大村線や鹿児島本線では、ロングシートの座席が基本でした。
一方、長崎本線の新型車両はボックスシート※ですが、ドア横に1人用の座席が2つずつ設置されているなど、「おひとり様問題」にも配慮されていました。
JR九州も注意を促すだけでなく「子どもたちに寄り添う形」で、「床座り文化」そのものを減らそうとしているのかもしれません。
※正確には「転換クロスシート」という、背もたれを前後に移動させることで座席の向きを常に進行方向に変えられるタイプで、2人掛けと4人掛けに対応しています。
最後に:自分も高校生だったら「床座り」したかも



今回、平日の九州を電車で回る中で、特に印象に残ったのは佐賀駅から鳥栖駅まで各駅停車で移動した時のこと。実はその日、佐賀駅でレンタルした自転車で有明海の海岸まで往復24kmも走ったので既にクタクタ。
せめて電車ではゆっくり座って車窓を楽しみたかったのですが、佐賀駅では1時間に1本しかない列車を、地元の高校生たちが既にずらっと並んで待ち構えています。まだ駅のホームだというのに、アウェイ感が半端ない。

そしてホームに電車が入ってくると、高校生たちはグループ毎にすごい速さでボックスシートに着席していきます。また「おひとり様の高校生」は、ドア横に収納されてる1人用座席を「タンっ!」と引き出して軽快に座り、無表情でスマホを取り出す。
別に競っていたわけではないけれど、高校生たちの早技になす術もなく、私は仕方なくドア前に立って鳥栖駅まで向かうことにしました。途中駅から新たに乗車してくる高校生グループや降車していく高校生もいて、車内はずっとハイスクール高校状態。高校生じゃない私は浮き気味です。
偶然空席ができても、こんな状態でボックスシートに入り込むのは完全に罰ゲーム。もし自分が高校生だったら、確かに床に座っていたかもしれません。でもこの路線は新型車両が導入されたからマシでしょう。

佐賀県内を走る唐津線は、未だに国鉄時代のキハ47という、ボックスシートのオンボロ車両が走っています。そして現地では、この唐津線で通学している高校生の姿も多く見かけました。彼らからしてみたら、佐賀に新幹線を通すより「このオンボロを何とかしてくれよ!」って思ってるかもしれません。
※本記事には、現地観察をもとにした筆者の考察を一部含みます。
新幹線が通らないのも「佐賀らしさ」の一つ

西九州新幹線の議論では、佐賀が一貫して「必要性」を冷静に見極めた姿勢を貫きました。でもそんな姿勢が「わがままだ!」って言われてしまうことがあるようです。
派手さよりも現実を優先する判断は佐賀人らしさ。なぜ佐賀が誘致に慎重なのか、その背景をより詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。



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