ペットボトルや食品トレーは回収されるのに、卵パックだけはなぜか対象外になっている ─ そんな小さな違和感を覚えたことはありませんか?
この記事は日々家庭ごみの分別をしている方に向けて、卵パックだけが回収されない理由をわかりやすく解説します。
見た目が似ていても素材や作り、回収ルートには明確な違いがあります。読んだあとには、あのモヤモヤがちょっと晴れているかもしれません。
なんで卵パックだけ回収されないの?
リサイクルしづらい構造だから

卵パックが回収されない一番の理由は、その素材の特徴にあります。
ペットボトルと同じPET(プラスチック素材の一種)でできてはいるものの、卵パックは「真空成形」という方法で作られていて、非常に薄くて変形しやすいんです。
このタイプのPETはコストが安いのですが、熱に弱くて再加工には向きません。しかも再利用するには一定の品質が必要なのに、卵パックはそれが確保しづらい素材。
ほかのPET製品と混ざると再生プラスチック全体の質が落ちてしまうため、業者としても「回収したくない存在」になっています。
見た目はペットボトルと似ていても「再利用のしやすさ」はまったく別。そこが、卵パックが回収されない大きな理由です。
軽くて薄くて仕分けしづらいから

卵パックがリサイクルに向かない理由は構造だけでなく、その軽さや薄さにもあります。工場の選別ラインでは風や振動に影響されやすく、ふわふわと舞って他の素材と混ざってしまうことがあるんです。
食品トレーやペットボトルのように重さと形が安定していれば機械で分けやすいのですが、卵パックは形も不安定で扱いづらい存在。
さらに家庭から出されたごみの中には紙製とPET製が一緒に混ざっていることも多く、現場では素材ごとの仕分けに手間がかかります。
見た目で完全に区別がつかないわけではありませんが、家庭で分けずに出されやすいという点が問題なんですね。
そうした事情もあり「回収しても効率が悪い」と判断され、リサイクル対象から外れやすくなっているのです。
汚れてると処理がとても面倒だから

卵パックって一見きれいに見えても、じつは意外と汚れやすいんです。特に卵が割れていたときなど、卵白や殻の破片がくぼみに残ってしまい、乾いてこびりつくこともあります。
しかもパックの表面は凹凸が多く水分がたまりやすい形状。洗ったとしても乾きにくく、他のリサイクル品に水分や臭いが移るリスクも出てきます。
業者側からすると「ちょっと汚れてるだけでも厄介」な存在なんですね。ペットボトルのように軽くすすいで乾かせばOKというわけにもいかず、手間もコストもかかる。
そのため、はじめから回収対象に入れていない自治体や業者も多いのが現実です。
ペットボトルや食品トレーと何が違うの?
ペットボトルは再利用されやすい作り

ペットボトルは「延伸ブロー成形」という方法で作られており、厚みがあって丈夫で熱にも強いという特徴があります。
このためリサイクルにとても適しており、全国の自治体でも回収の仕組みがしっかり整っています。
ラベルとキャップを外して出せば、ほぼ確実に再利用される素材として扱われていて「繊維」や「トレー」、あるいは再びボトルに戻すなど、さまざまな使い道があります。
業者から見ても品質が安定していて取り扱いやすい、まさに優等生といえる存在。同じPETでも卵パックのように薄くて加工しにくいものとはまったく別の評価を受けているんですね。
食品トレーは専用で回収する仕組みがある

スーパーに置かれている「食品トレー専用の回収ボックス」。ただ集めているように見えて、実は回収から洗浄、再加工までを一貫して行う仕組みが整っています。
たとえば「エフピコ」という会社は白いトレーを集めて、新しいトレーに生まれ変わらせるリサイクルを実施しています。
もちろん汚れがひどかったり色付きのものは回収対象外になることもありますが、基本的には「出せば再利用される」という流れができているんですね。
こうした専用のルートがあることで、業者は安心して引き取れますし、消費者も迷わず出しやすい。この仕組みの有無こそが、卵パックとの大きな違いです。
卵パックはリサイクル業者が欲しがらない

卵パックは回収しても扱いづらく使い道もない ─ そんな理由で、業者から敬遠されがちです。
素材が薄く品質も不安定。そのうえ卵の汚れや紙製との混在などがあると、再利用の手間はさらに増えてしまいます。
ペットボトルのように再商品化のルートが整っているわけでもなく、食品トレーのような専用の回収体制もありません。
つまり「売れない」「処理が面倒」「トラブルになりやすい」の三拍子がそろった素材なんです。
実際にスーパーの回収ボックスでも「卵パックは入れないで」と明記されているのは、そうした事情を踏まえた判断ということ。
同じPETでも現場での扱いやすさによってここまで明暗が分かれる例は、そう多くありません。
回収されなかった卵パックってどうなるの?
紙のパックはトイレットペーパーになる

卵パックには、PET製だけでなく紙製のタイプもあります。ざらっとした手触りでグレーっぽい色をした紙のパック ─ いわゆる「パルプモールド」と呼ばれるものですね。
これは牛乳パックなどと同じく古紙として回収される対象になっていて、回収後は細かく砕かれて水に溶かされ、再びパルプとして再利用されます。
そして何度か再生をくり返したのち、最後はトイレットペーパーとして使われるのが一般的な流れです。
もちろん汚れがひどかったり湿って傷んでいたりすると燃えるごみに回されることもありますが、基本的には「リサイクルされる側」の素材です。
つまり卵パックでも紙製なら最後まできちんと使い切ってもらえる、そんな扱いを受けているんです。
紙の卵パックは持ち運び用ケースにも使える

紙パックはリサイクルする前に、もうひと工夫できることもあります。
たとえばアウトドアで生卵を持ち運ぶとき、使い終わった卵パックを再利用すれば「専用ケース」がなくても安心。軽くて収まりもよく、そのまま活用できます。
プラのパックは燃やされて灰になる

一方でPET製の卵パックは多くの自治体でリサイクル対象外となり、燃えるごみに出されます。家庭から出されたパックはそのまま焼却施設に運ばれ、高温の炉で処理されます。
PETは燃やすことで熱エネルギーになりますが、再利用されるわけではありません。燃やしたあとには「焼却灰」と呼ばれる灰が残り、それが次の工程へと運ばれていきます。
つまり見た目は似ていても、ペットボトルのように再利用されるPETと、卵パックのように焼却で終わるPETとでは、その後の道のりがまったく違うということです。
捨て方は間違っていなくても「その先」がどうなっているかまでは、意外と知られていないかもしれません。
最後は子どもたちの公園になることもある




卵パックは燃やされたあと「焼却灰」となって全国の最終処分場に運ばれ、土の中に埋められます。こうした処分場は「焼却灰」を安全に処理するために整備された施設で、全国各地に設けられています。
そして実は、役目を終えた処分場の多くが「公園やスポーツ施設」として再整備されていることをご存じでしょうか。
たとえば東京都では、長年使われてきた「中央防波堤埋立地(最終処分場)」の一部が整備され、「海の森公園」として子どもたちの笑顔があふれる場所に生まれ変わっています。
あの卵パックも公園の土の下で、未来の景色を支えているのかもしれません。それもまた、ひとつのリサイクルの形ですよね。
まとめ

卵パックが回収されない理由には、見た目ではわからないような事情がいくつも重なっています。
素材の質が低くてリサイクルに向いていなかったり、軽くて仕分けが難しかったり、汚れやすくて処理コストがかかったり ─ どれも業者にとっては回収しにくい要因ばかりです。
ペットボトルや食品トレーのように、再利用されやすい仕組みが整っているわけでもありません。だから「同じように見えても、中身はまったく違う」と知っておくことが大事です。
モヤッとしながら捨てていた卵パックも、背景がわかると少しスッキリしますよね。ほんの小さな気づきが、暮らしの中の違和感を軽くしてくれることもあります。
編集後記

今回は「なぜ卵パックだけが回収されないのか?」というテーマで記事をまとめてみました。リサイクルって、実はよくわからないことが多いですよね。
食品トレーや牛乳パック、段ボール、ペットボトルは当たり前のように回収されているのに、卵パックだけはなぜか回収の対象にならない ─ 私自身、言われてみて初めて「あれ?なんでだろう」と思いました。
もちろん、現状としては「卵パックは捨てるしかない」というのが実情ではあります。でもその後どうなるのかを知っておくことで、少し気持ちが軽くなる人もいるのかなと思っています。
処分場の跡地が子どもたちの公園に変わるというのも、私はすごく素敵なことだなと感じました。自分を責める必要なんてありません。自治体のルールに従って、気負いすぎずに向き合っていきましょう。
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