鳥栖駅の中央軒:昼は駅でうどん。夜は「かしわめし」の持ち帰りが最高すぎた。

鳥栖駅の中央軒:昼は駅でうどん。夜は「かしわめし」の持ち帰りが最高すぎた。 食べる

出張や旅行で鳥栖駅に降り立ったとき、「食事はどうしよう?」と悩んだ経験はないでしょうか。最近は駅前にショッピングモールができたとはいえ、飲食店の数は駅の知名度に比べて少なめです。

そんなときに思い出してほしいのが、ホーム上の立ち食いうどん店「中央軒」と、持ち帰り用の名物駅弁「かしわめし」。

この記事では昼はうどん、夜は駅弁という中央軒「連食」を実践した筆者が、中央軒の魅力や鳥栖駅ならではの味について紹介します。

どこか懐かしくて、あたたかい。そんな昭和の旅情を、いま改めて体感できる一日になるかもしれません。

見ただけで腹が減る佇まい — ホーム上の昭和

見ただけで腹が減る佇まい — ホーム上の昭和
見ただけで腹が減る佇まい — ホーム上の昭和

鳥栖駅で電車を降りた瞬間、ふわりと漂ってくる出汁の香りに、足が自然と吸い寄せられてしまいました。ホームに立つ「中央軒」は、いわゆる立ち食いうどん店。

でもその姿は、最近よく見るタイプの駅そば・うどん店とは違います。ホーム上にあるのに周囲は壁に囲われることもなく、風が通り抜けるオープンな屋台型。

カウンター越しに見える積まれた丼ぶり、木製の棚。そして「すべてのうどん・そばにかしわ肉が入っています」といった出汁の染みた張り紙までが、まるで昭和の駅をそのまま切り取ったかのよう。

いまでは貴重になったこの風情を、鳥栖駅では今でも体験できる。目に入った瞬間、そして香りを感じた瞬間、すでに「食べたい」が始まっている。そんな圧倒的な存在感が、この場所にはありました。

うどんと甘辛いかしわ肉が心にしみる

うどんと甘辛いかしわ肉が心にしみる
うどんと甘辛いかしわ肉が心にしみる
うどんと甘辛いかしわ肉が心にしみる

迷う間もなく注文したのは、名物の「かしわうどん」。

お代を現金で支払い、1分ほどで提供されたのは、ふんわりと立ちのぼる湯気と白くてツヤツヤの麺、そして甘辛く煮付けたかしわ肉がたっぷり乗った一杯でした。

まず驚いたのは、麺の柔らかさ。関東では「コシがない」と表現されがちですが、それとはまったく別の「優しい食感」でした。出汁とよくなじみ、口に運ぶたびにほっとする味わい。

かしわは鶏そぼろのような形状で、ひとつひとつがしっかりしていて、甘さと塩気のバランスもちょうどいい。うどん全体を引き締める具として、とても優秀だと感じました。

今までうどんの具には「揚げ物ばかり選んでいた」ことを反省したくなるような美味しさです。スープも飲みきれるやさしい濃さで、すべてが完璧にまとまっていました。

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昼のうどんと夜のめし — 今も残る駅の味

昼のうどんと夜のめし — 今も残る駅の味
昼のうどんと夜のめし — 今も残る駅の味
昼のうどんと夜のめし — 今も残る駅の味
昼のうどんと夜のめし — 今も残る駅の味

鳥栖駅に着いたのは夕方の17時頃。電車を降りた瞬間、中央軒のレトロな店舗と出汁の香りにグッと来てしまい、気づけばホームで「かしわうどん」をすすっていました。

この日は朝から何も食べていなかったので、ちょっと遅めの昼食という形で満たされた気分に。

その後駅周辺を歩いてみたものの、何とも表現が難しい「何もない鳥栖」に絶句し、早めに宿泊先へ向かうことにしました。中央軒は改札の外にも店舗があり、しかも夜は21時まで営業。

つまりホームでは立ち食い、外では駅弁という「二毛作」スタイルがしっかり成立しています。出張で一泊する人にとって昼はうどん、夜はかしわめしという「一日二食・中央軒三昧」はじんわり嬉しい。

ちなみに、うどんも容器代60円で持ち帰りが可能だそうです。

木箱の香りと色合いが旅情をかきたてる

木箱の香りと色合いが旅情をかきたてる
木箱の香りと色合いが旅情をかきたてる
木箱の香りと色合いが旅情をかきたてる

宿泊先へ持ち帰った「かしわめし」は、今では珍しくなった木目調の駅弁箱。ふたを開けた瞬間、ふわっと香ばしい香りが広がって、もうそれだけで「旅してる感」がこみ上げてきます。

中には甘辛い鶏そぼろと、錦糸卵、刻み海苔が斜めに美しく並び、真ん中には紅しょうがと焼売がちょこんと添えられているという、見た目にも気持ちが上がる内容でした。

ご飯はしっかりと炊き込まれていて、そぼろや卵と一緒に口へ運ぶと、なんともいえない幸福感が広がります。ホテルの部屋でひとり静かに味わう夜の駅弁。

「かしわ」が美味しいのは想像通りですが、長い鉄道旅で疲れている時は、意外にも「炊き込みご飯と錦糸卵」の優しさがありがたい。こういう「静かなごちそう」って、久しぶりだなって思いました。

今も変わらない鳥栖駅の飯 — 中央軒と旅の味

今も変わらない鳥栖駅の飯 — 中央軒と旅の味
鳥栖駅構内展示物より
今も変わらない鳥栖駅の飯 — 中央軒と旅の味
鳥栖駅構内展示物より
今も変わらない鳥栖駅の飯 — 中央軒と旅の味

鳥栖駅は、鹿児島本線と長崎本線が分岐する鉄道交通の要衝。かつて蒸気機関車の時代にはここに「鳥栖機関区」が置かれ、機関車の入れ替えや点検が行われていました。

つまり鉄道運用の拠点だったこの駅は列車の停車時間も長く、乗客が駅構内で過ごす時間が自然と増えていたようです。

そんな環境の中で求められたのが、さっと温まるうどんや、列車内で食べられる駅弁の存在。中央軒はその時代から鳥栖駅のホームにあり続け、今もなお変わらぬ風景を守っています。

時代が変わって列車のスピードが上がっても、旅の記憶を残すにはこうした「変わらないもの」が欠かせません。

風が抜けるホームで湯気をまとったうどんに出会うとき、時代を超えた駅の味が、静かに心にしみてきます。

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