スーパーのチルドシュウマイコーナーで、ひときわ目を引く「赤い箱の商品」があります。見た目はしっかりしているのに、価格は120円前後という驚きの安さ。
他のメーカー品が200円台~300円台で並ぶ中、この商品だけが全国どこでも同じように安く手に入ります。
本記事ではこの「赤い箱のチルドシュウマイ」がなぜ安いのかを知りたい方に向けて、製造や流通の仕組みから業界での立ち位置までを解説します。
読めば全国シェア4割程度(業界関係者の資料による)を占めるこのメーカーが低価格を長年維持できる理由と、その裏にある戦略が見えてきます。
全国シェア4割を誇る激安チルド焼売の実態
全国に広がる圧倒的な販売網
全国のスーパーや量販店で見かけるチルドシュウマイの中でも、ひときわ目立つのが120円前後の「あの赤い箱」。どこへ行っても棚に並んでいるため、いつの間にか生活に溶け込んでいます。
実はこれらの多くは、国内に複数の製造拠点を持つ某大手メーカーによって作られています。各地域へ効率的に供給できる体制が整っているため、輸送コストを抑えつつ安定した供給が可能です。
さらに自社ブランドだけでなく、スーパーの名前を冠したプライベートブランド(OEM)商品としても販売され、異なるパッケージでも中身がほぼ同じとされるケースもあります。
こうして棚の占有率が高まり、「どこに行っても置いてある」という認識が強まっています。
他メーカーと比べた価格帯の差

スーパーのチルドシュウマイコーナーを見渡すと、200円台から300円台の商品が並ぶのが一般的です。
その中でこのメーカーの商品は120円前後という低価格。内容量は他社とおおむね同等か、やや少なめですが、コスパの高さは際立っています。
この差は消費者の購買意欲を大きく刺激し、同じ棚に並べば「手に取りやすさ」で圧倒的に優位に立ちます。特売やタイムセールを行わなくても、通常価格で他社の割引後と同程度の水準を実現。
結果として安定して売れ続け、販売数量の増加がさらなるスケールメリットを生む好循環を築いています。
消費者が抱くチルドシュウマイは安いという印象

このメーカーの影響力は価格だけにとどまりません。全国の売り場で頻繁に目にすることで、消費者は「チルドシュウマイは安いもの」という感覚を自然と持つようになります。
実際には他メーカーの商品は価格帯が異なる場合も多いのですが、シェア4割という圧倒的な存在感がチルドシュウマイ市場全体の価格イメージを押し下げています。
この影響は日常的にスーパーを利用する層ほど強く、「チルドシュウマイは安くて手軽」という固定観念を形成します。
その結果、他メーカーが差別化を図っても安さの印象が強すぎて価格を上げにくい環境が長く続くことになります。こうして一社の戦略が、市場全体の価値観に影響を及ぼす状況が生まれています。
低価格を支える大量生産と流通効率化の仕組み
年間生産量と売上規模から見る高稼働モデル
この国内大手メーカーは、年間およそ2,683万パックのチルドシュウマイを製造していた時期があります(過去の資料より)。
店頭での販売価格は1パック120円前後が相場ですが、小売店へ出荷する際の卸価格をその65%程度と仮定すると、1パックあたりの卸価格は約78円。
これを年間製造数にかけると、およそ20億円規模の売上になると試算できます(推定値)。工場は全国に複数あり、従業員は約300名体制(同社HPより)。
あくまで想像上の数字ですが、この規模の会社を維持するには、生産ラインをほぼ止めずに稼働させる「高効率な運営」が必要となります。
つまりこのメーカーは大量生産によって1個あたりの製造コストを下げ、安定供給を続けることで安さと利益を両立させていると考えられます。
OEM供給が生むスケールメリット

このメーカーのチルドシュウマイは自社ブランド品としてだけでなく、多くのスーパーや量販店のプライベートブランド商品としても販売されています。
パッケージデザインや商品名は異なっても中身が近いとされるケースもあり、製造ラインや原材料の共用が可能です。
これにより大量の発注をまとめて処理でき、原材料や資材の一括仕入れによるコスト削減が実現します。OEM供給先が増えるほど製造数量が拡大し、1パックあたりの製造原価はさらに低下します。
このスケールメリットこそが低価格で提供し続けられる大きな理由であり、同時に市場での存在感を押し上げる要因にもなっています。
広告費をかけない販売戦略

このチルドシュウマイは、テレビCMや大規模な広告キャンペーンをほとんど行っていません。
その代わり全国のスーパーや量販店の店頭に商品を常時並べることで、消費者の目に自然と触れる機会を増やしています。
特売や広告費をかけずとも価格と流通網の広さが購買の後押しになるため、販促コストを抑えても売上を維持できるわけです。
さらに一部はOEM品として各スーパーの自社ブランドに組み込まれることで、売り場の棚に並ぶ数が増え認知度は一層高まります。
このような「売り場を広告にする」戦略はコスト削減と販売力の両立を可能にし、低価格を長期にわたり維持する大きな支えとなっています。
安さを長年維持する業界での立ち位置と背景
シェア上位がもたらす小売との交渉力
このメーカーはチルドシュウマイ市場で約4割という高いシェアを持っています。
この規模はスーパーや量販店にとっても重要な仕入れ先となる水準であり、価格や取引条件の交渉において有利な立場を築きます。
棚に欠かせない定番商品であるため、販売側も安定供給を最優先に考えざるを得ません。その結果、流通面や仕入れ価格に関する調整がスムーズになり、安さを維持しやすくなります。
シェア上位であることは単に販売量が多いだけでなく、小売側にとっての存在感や依存度を高め、長期的な取引関係を築く土台となります。
親会社による戦略とグループの相乗効果

実はこのメーカー、食品関連の持株会社グループに属しており、原材料の共同仕入れや物流ネットワークの共有といったスケールメリットを享受しています。
グループ全体で豚肉や鶏肉、小麦粉などの主要原料を大量一括購入することで、単価を引き下げることが可能です。また配送ルートや保管設備もグループ会社と共有し、物流コストを抑えています。
こうしたグループ内の連携は単独では実現しにくいコスト削減を可能にし、低価格戦略の継続を支えます。
さらにグループ全体の販売網を活用することで、新規の販路開拓やOEM先の拡大もスムーズに進められています。
他社が追随できない価格戦略の理由


安さを支える構造は表面的な価格競争だけではありません。
このメーカーは高いシェアと広い販路、そしてグループ規模による仕入れ・物流効率化を組み合わせ、他社にとって同様の展開は難しいコスト構造を築いています。
これにより他社が同じ価格帯で販売すると利益率が大きく落ち、継続が難しくなります。
さらに安価な価格帯で市場に長く定着しているため、消費者の中では「この商品はこの価格」という認識が強く根付いており、値上げが受け入れられにくい環境も作られています。
結果として他社は差別化や高付加価値路線を選ばざるを得ず、このメーカーの低価格戦略は長期的に優位を保ち続けています。
まとめ

今回取り上げた某国内大手メーカーのチルドシュウマイは、全国シェア4割という圧倒的な存在感と、120円前後という驚きの価格設定で市場で存在感を放ちます。
その安さの背景には全国に複数の工場を持つ大量生産体制、OEM供給によるスケールメリット、広告費をかけない販売戦略といった複合的な仕組みがあります。
さらに親会社のグループ戦略や共同仕入れの効果がコスト削減を後押しし、長年にわたり低価格を維持する土台となっています。
一方でこの価格構造は他社が容易に真似できるものではなく、市場全体の価格イメージに影響を与えるほどの力を持っています。
何気なく手に取っている赤い箱の裏には緻密な生産と販売の戦略が隠されていることを知ると、日々の買い物の見方も少し変わってくるのではないでしょうか。
コメント