私の名前は熊田久真子。
小さな会社で働いている。
鮭とパスタと、
ちょっとお酒が大好きな、
普通の女子だ。
今日は休日。
髪を整えたくて、近所の美容院へ。
入り口のガラス扉を開けた瞬間、
ほんの少しだけ、空気が違った。
受付のスタッフが笑顔で
「コンニチハ〜」
と、柔らかいアクセントで
迎えてくれたから。
あ、外国の人なんだな、と思う。
でも明るいし丁寧だし、
むしろ好印象。
私は案内され、席に座った。
アシスタントの女性が来て、
シャンプー台へ誘導される。
黒髪で小柄だけど、
言い回しがどこか外国っぽい。
「お湯、熱ないデスネ?」
「タオル、失礼シマス」
優しい手つきでシャンプー、
気持ちいい。
でも途中、
あごのラインに“ひやっ”とする
不思議な感覚があった。
ジェル?美容液?
そう思ったのも束の間、
女性は私のあごをなでるよう
整えていく。
「うん、キレイに見えマス」
「スッキリ、ネ」
うぶ毛ケアかな?
美容って進化してるなあ……と、
私はふつうに納得していた。
席に戻ると、
長身の男性スタイリストが現れた。
発音にヨーロッパっぽさが
混ざっている。
「ハロー」
「今日はスッキリめにカット、OK?」
は…ハロー……?
まあいっか。
美容院も国際色豊かになったんだなあ。
彼は真剣な顔でハサミを握る。
ただ、持ち方が…なんか…
包丁を扱うみたいに大きい。
「リラックス、リラックスネ」
そのままカットが始まった。
ちょっと豪快だけど、
技術自体は悪くない。
続いてカラー担当の女性が現れた。
彼女は早口で、
言語がよく分からない。
でも笑顔は優しくて、
「OK? スタイリッシュ?」
「イイカンジ?」
と親指を立てるので、
たぶん良い感じなんだと思う。
ブロー担当はまた別の人。
彼の言葉は聞き取れなかったけど、
ドライヤーの技術だけは
神がかっていた。
気づけば、両隣の席も外国人。
お客さんもスタッフも。
なんだこれ…、
この美容院、私以外みんな外国人なの…?
でもまあ、
髪もいい感じになったし、
満足した私は会計に向かった。
レジには、また別のスタッフ。
「オキャクサマ、オツカレサマデシタ」
「コチラ、メンズコースのお値段で ─ 」
…………はい?
え、いまなんつった?
メンズコース??
私、女ですけど!?
「エ?オキャクサマが、オンナ??」
スタッフは一瞬固まった。
後ろでカルテを確認していた人が、
声を漏らす。
「ア……スミマセン……」
「ボク、最初ニ、ミステイク……」
「オトコに見エタカラ…」
「“メンズ”デ入力シマシタ……」
え、最初から?
じゃあさっきのあごの“スッキリ”、
あれ完全にヒゲ剃り!?
ちょっと、待って、いやいやいや!
どっからどう見ても女でしょーが!!!💢
思わず、店内に響く声で叫んでいた。
スタッフたちが一斉に謝りながら、
わたわたと動き回る。
その様子を見て、私はふと思った。
今日一日、受付からシャンプー、カット、
カラー、ブロー、会計まで
担当者全員外国人だったじゃん……。
こんなに国際色豊かなんて、
いつから日本はこうなったの?
ていうか…
わしゃ女じゃあああああ!!!!💢





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